ティーペアリング体験と、心安らぐ抹茶書®︎体験(静岡・後編)
こんにちは、伊澤恵美子です。静岡のお茶旅・後編では、前編と同じく、DMOするが企画観光局が企画した「ティーペアリングと抹茶書®体験」を取材してきました。
大ボリュームのティーペアリング体験
この日訪れたのは、静岡市の中心街(静岡の人は「おまち」と呼んだりします)静岡伊勢丹近くにひっそりとある小さな入口。「覚弥別墅(かくやべっしょ)」さんです。一見見逃してしまいそうな隠れ家的入口から、さらに奥のエレベーターに案内されます。3階に上がると、静謐(せいひつ)な別世界が広がっていました。
ここでは、覚弥別墅さんのお料理に、静岡のマルヒデ岩崎製茶さんの茶師、岩崎さんが日本茶を合わせるコースが楽しめるということで。
ちなみに「覚弥別墅」というお店の名前は、その昔、駿府の国にいた「岩下覚弥」という徳川家康お抱えの天才料理人から取っているそうです。
吹き抜けの中庭を眺められるカウンター席に座って、コース料理がスタート。まずはウェルカムドリンクとして水出しの緑茶を頂きます。
こちらは静岡産のお茶かと思いきや、静岡産と鹿児島産の合組、すなわちブレンド茶とのこと。地域ごとのお茶の味わいの「違い」を排除するのではなく、合組(ごうぐみ)して美味しいものにしていく。とっても素敵な合組です。
近年はお茶の生産量で鹿児島と首位を争っている静岡。正直、首位陥落ということで静岡出身として悲しい思いもありますが、地域で争うのではなく、日本茶全体として盛り上げていこうという思いを勝手に感じたウェルカムドリンクでした。
ちなみに、水出し茶は、茶こしにスプーンで茶殻を押し付け、絞りとることによってさらに味が出るそうです。お家でも試してみたいひと手間を教えていただきました。
目の前で1杯ずつ丁寧に淹れてくれるため、そのパフォーマンスも面白いところです。お茶のお話に花を咲かせていると、最初のお料理が運ばれてきました。
静岡といえば、やっぱりお魚。天然のミナミマグロや、カマス、キンメダイの地魚盛りに合わせるのは、静岡市清水区のお茶「まちこ」を使ったボトリングティーです。ボトリングティーとは、特別な製法で茶葉を抽出しボトルに詰めた、リキッドタイプの高級茶のことをいいます。
一口飲むと、桜が入っているかのようなお味が。桜がミックスされているのかと思いきや、なんとこの桜感は「まちこ」そのものが持つ味だそうです。びっくりして思わずボトルの裏を確認してしまいました。
次の1杯には、オーソドックスに急須で入れた「まちこ」。ボトリングティーとは違った味わいです。ちなみに、茶器に描かれていたこのかわいいクマは「まちこ」に含まれる「クマリン」という成分をキャラクターにしたものだそう。(ほしい…)
続いてのお料理は、味噌の味付けの鶏すき焼き。
こちらに合わせるお茶は、浅煎りの焙じ茶を急冷したアイス焙じ茶です。
その場で焙じるため、お茶の香りがふわっと広がります。高温で火を入れた焙じ茶を急冷することによって香ばしさや力強さがそのまま残っており、味噌のお味に負けることも邪魔することもない絶妙なバランスでした。
次のお料理、メロカマの幽庵焼きには、少し火入れした茶葉を氷出しした、すすり茶を。すすり茶とは、急須を使わずに、湯のみに直接水と茶葉を入れて飲むお茶のことです。
氷を押さえて、すすっていただきます。
氷出しならではのお出汁のような旨味に、濃厚なメロカマの味がよく合います。
さらに、すすり茶の茶葉をいただくこともできます。通常はポン酢などをかけて食べますが、私はそのままいただいちゃいました。味はもちろん、いろいろなお茶の飲み方が楽しめる体験ですね。
その後も牡蠣や天ぷらなどボリュームたっぷりのコースが続き、いよいよご飯ものに。鯛の土鍋ご飯に合わせるのは、なんと和紅茶です。
なかなか紅茶とご飯を合わせることはないので驚きです。岩崎さんによると、和紅茶は渋味成分が少ないため、お米と合うそう。
コースの最後には、コーヒーと焙じ茶のブレンドティー?コーヒー?をいただきました。
静岡のHUG COFFEEさんのコーヒーとのブレンドだそうです。(ちなみにHUG COFFEEさんは静岡の若者が集う人気の珈琲屋です。)コーヒーに、ほんのり焙じ茶の香りや味を感じる変わり種のお茶を最後に、満足感のあるコース料理は終了です。
お料理も大変楽しめて、お茶の様々な味、飲み方を堪能できるコースでした。
心安らぐ抹茶書®︎体験
大満足のお食事の後は、抹茶を使って書道をする「抹茶書体験」です。教えていただくのは、静岡市のご出身で、抹茶書を考案された松蘭(しょうらん)先生。
ご実家が静岡県掛川の茶農家で、さらに、書道家のお祖父様の影響もあって、抹茶+書道を始められたそうです。松蘭先生の生徒は、半数が外国人。静岡茶と書道を通して、日本文化を世界に発信しています。
お祖父様の書道教室が茶畑の中にあったとのことで、その風景を思い浮かべながら、書道を教えて頂きます。
まずは、墨汁の代わりになる、抹茶を溶かしていきます。こちらは、静岡県島田市の抹茶。製造工程でやむをえず廃棄処理されてしまう茶葉を使っているそうです。
お水で溶かして、ダマにならないように筆で混ぜます。
飲めるんじゃないかと思うほど、抹茶です(笑)(香りをかいでいます。)ほんのり抹茶のよい香りがして、心が落ち着きます。
それでは書道教室へ。基本の線から始めます。習字は久しぶりで緊張しますが、優しく丁寧に教えて下さいます。
練習で書いていて一番感じたことは、とにかく抹茶の緑色が美しいということ。 自然の緑の色で、野菜の葉っぱのようです。墨汁より、濃淡が出やすいのも特徴で、水墨画に近い感じでしょうか。筆跡もしっかり見えて、よりアート感溢れる文字になります。
しばらくすると、書いた時よりも少し渋めの緑色に変化します。空気に触れることで徐々に色が変わっていくそうです。時間とともに変化する姿も趣深いものがあります。
順調に、縦の線や、ハネ、左払いなどを練習した後は、いよいよ本番です。自分の好きな文字を色紙に書いていきます。
私は、自分の名前に入っているので少しは書き慣れているかな…ということで「美」の文字を。
まずは、これまでの練習を思い出しながら自分で書いてみます。そして、先生がここでも丁寧にアドバイスをくださいます。
何回か練習を繰り返し、いよいよ色紙へ。緊張しましたが、松蘭先生のおかげで、なんとか形にできました。
この抹茶書の色は本当に目に優しく、美しい色なんです。抹茶の香り、色に癒されながらの書道体験は、このデジタル社会の中で気持ちを落ち着けるのにとても向いていると感じました。
さらには、万が一服についても、墨汁よりも洗って落としやすいという安心感があるのも抹茶書のよいところ。またやってみたいなと思いました。
前編、後編と静岡のお茶旅をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。お茶所・静岡らしい、バリエーション豊かなお茶体験は、他にもたくさんあります。ぜひ、静岡でのお茶旅をお楽しみください。
■ティーペアリングと抹茶書® 体験
■販売会社:株式会社FIEJA
■販売サイト:https://fieja-japan.com/jp/teaexp1/
▼するが地域の旅情報はこちら(公益財団法人するが企画観光局)
https://www.visit-suruga.com/