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2022-05-04

知覧茶【前編】広大な茶畑でのお茶づくり| 新茶前線北上レポート

 こんにちは。新茶前線レポーターの山田璃々子です! 記念すべき最初のレポートは鹿児島県/知覧茶の浮辺製茶さんからお届けします。

 鹿児島県は、温暖な気候や、平らな土地、さらには開聞岳からの火山灰土など、お茶づくりの環境にめぐまれた地域。お茶の生産量が全国上位の常連さんです。そんな鹿児島県の中でもトップの生産量を誇るのが、知覧茶がつくられる地域となります。

 浮辺製茶さんの茶畑に到着して最初に目に入ったのは、見渡す限り続くお茶畑一色の大地。自分が今どこにいるのかわからなくなってしまうほど、緑の絨毯が広がっていました。
 率直に「どうやってこんなに多くのお茶づくりをしているの?」と気になりました。今回は、知覧から、広大な茶畑でのお茶づくりの様子をみなさんにお届けできたらと思います。

きれいな緑色にするための工夫

 私が茶畑にお伺いしたのは2022年4月25日。うっすらとした雲をかぶりながらも爽やかな風がそよ吹く1日でした。到着した時は、ちょうど「バロン」という黒い布を茶畑から外す作業が始まっていました。

 「バロン」とは、お茶を摘む約1週間前に茶畑に被せる布。太陽の光を遮ることで、葉の光合成を促して、お茶の葉が濃い緑色になるそうです。バロンから出てきた新芽は、まるで眠りから覚めておはようと挨拶しているようでした。

 さっそく、私もバロンを外すお手伝い! 1枚50mもあるバロンをバウムクーヘンのように棒へ巻きつけていきます。一緒に作業をされているのは技能実習生として来日しているみなさん。偶然私と同い年の実習生の方もいらっしゃいました! バロンの巻き取り方を教えてもらいながら作業をすすめます。

 見た目はパリッとしているバロンですが、実はふわふわしていて気持ちが良い触り心地。これならお茶の葉にあたっても、お茶が傷つかないですね。

 そして、ロール状になったバロンを肩に乗せてトラックの荷台まで運びます。体力には自信があったものの、うまくバランスが取れずによろけたり、持ち上げるのが大変でなかなか荷台に乗せられず、一つ運び終わる頃には息が上がってしまい大反省!

 布を外すだけでも大変な作業なのだと身をもって実感しました。

 大変な作業ですが、こうしたひと工夫で、葉の色や、お茶の水色(すいしょく)が、より艶やかな緑に。また、渋みを抑えた味わいも表現できたりするのです。

お茶は生きもの! 時間との勝負!

 どこまでも続く茶畑と皆さんの作業の素早さに圧倒されていると「次の場所へいくよ」と車にのって皆さんどこかへ。慌ててついていくと、目の前にはまたも大きな茶畑が出現しました。一体どこまで茶畑なんだと驚いていると、なにやら後ろから、ウィーンという音とともに赤くて大きな機械が登場。

 この大きな乗り物の名前は「乗用型摘採機」。今朝バロンを外したばかりの茶畑の畝に沿って、お茶をガツっと刈り取っていきます。

 なんとこの地域では「乗用型茶摘採競技大会」というレースがあり、浮辺製茶の山口さんも出場経験があるんだとか。大規模な茶畑の鹿児島ならではですね!

 そうこうしているとあっという間に刈り取った茶葉がいっぱいに! すぐさま加工場へ直行します。というのも、摘んだ後も花々と同じようにお茶は呼吸しているので、ここで鮮度を落とさず素早く工場へ運ぶのが肝! とても見事な連携プレーでした。

 大量の茶葉ですから加工場は24時間稼働。皆さん交代しながら常に人の目で茶葉の状態をチェックしています。これは、機械の不具合の対応はもちろん、茶葉加工の細かい調整は人間でないと判断がつかないからだそうです。例えば、朝摘んだ茶葉と、昼摘んだ茶葉では、葉に含まれる水分量が異なります。その時の茶葉の状態を細かく確認しながら、お茶づくりをされているんですね。

時代とともに需要にあわせて変わるお茶畑の風景

 浮辺製茶さんが創業したのは昭和41年。ご先祖さまは士族で、半農半士の生活を送っていたそうです。自給自足のような生活から、商業へと転換しはじめたのは、山口さんの祖父にあたる友吉さんの時代で、紅茶栽培から始まりました。当時、挿し木の紅茶は世界的にみてもかなり珍しく、注目を浴びていたそうです。

 その後、山口さんの父・友治さんの代では、世の中の需要に合わせて、紅茶向きの品種の木を抜根し、緑茶向きの品種の木に植えかえることに。(今まで、紅茶と緑茶の木は別だと思っていたのですが、実は同じ木! 茶葉を摘んだ後の加工の違いで、緑茶、紅茶と別れて行きます。ここでのお話は、より緑茶に向いている品種「やぶきた」にお茶の木を植え替えたということです。)植えかえは、山口さんが高校生の夏休みの時で「芋と紅茶が交互に植わってたんだよね。それを燃やしたのをよく覚えてる。」とのこと。ここで「浮辺製茶」が誕生しました。

 そして現在、山口さんは「より理想のお茶を作れるように」という想いから、9種類の品種を育てています。お茶の世界では、種類の違う茶葉をブレンドすることを「合組」と言いますが、合組の際、品種の多様性が生かされるとのこと。まるで、絵の具を集めるようにお茶を育て、絵を描くようにお茶をつくりあげているように見えました。

 後編では、今年摘みたての新茶を囲みながら、山口さんのお茶へのこだわりをレポートします。

■知覧茶【後編】味わって感じるお茶づくりへのこだわりと、これからの知覧茶 | 新茶前線北上レポート

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