知覧茶【後編】味わって感じるお茶づくりへのこだわりと、これからの知覧茶 | 新茶前線北上レポート
こんにちは。新茶前線レポーターの山田璃々子です! 知覧茶レポートの後編では、摘みたての「新茶」をいただきながら、浮辺製茶・山口さんのお茶づくりへのこだわりや見据える未来についてのお話をお届けします。
今年の新茶の味わいは?
写真は、2日前に出来上がったばかりの新茶です。青々としたみどり色の水色(すいしょく)が綺麗ですね。
実際にいただいてみると、とってもまろやかで最後までスッキリ! 春の青空が思い浮かぶ色と味わいでした。「お茶の色にこだわることは知覧茶の特徴の一つ」と、山口さん。前編でご紹介した“バロンを被せて光を遮ることで、お茶の色がしっかりと出る”という意味が分かった気がします。
今年、知覧では例年よりも12月〜2月までの気温が安定して低く、3月になると、休眠明けの植物が一斉に芽を伸ばす年だったそうです。そのため、例年は1週間ほど咲く時期が異なる山桜とソメイヨシノも、今年は同時に咲くほどだったとのこと。お茶の木も同じく、3月以降の気温の上昇とともに、さまざまな品種のお茶の新芽が一気にすーっと伸びたそうです。
同じ土地でもその年の気候によって、お茶を摘むタイミング、お茶の加工方法は変わります。季節を敏感に感じ取って、それに合わせてお茶を作る。年ごとに新茶の味わいの違いを感じるのも、趣深いですね。
直営店のオープンで、変化したお茶づくり
以前は、出来上がったお茶は問屋さんなどに卸しており、直接お客さまに販売はしていなかった山口さん。自分で作ったお茶を、自分の名前で、少しでもいいから売ってみたいと思ったのがきっかけで、お茶の栽培から加工、販売までを一貫して行う「自園・自製・自販」のスタイルで、2011年4月に直営店「お茶の春一番」をオープンしました。毎年、春先に吹く強風「春一番」のニュースを見て「お茶の春一番」を思い出してほしい。そんな想いで名付けた店名だそうです。今では浮辺製茶工場で製造している荒茶のおよそ3分の1を、ここ「お茶の春一番」で販売しています。
直営店を構えてからは、これまで以上にお客さまの声が直接聞けるようになり、その声は山口さんのお茶づくりにも活かされるようになりました。「こんなお茶が飲みたい」という声から、頭の中で設計図を描き、それに近いお茶がつくれるように、様々な品種づくりに挑戦しているとのこと。ちょうど今年からは「はるみどり」という新たな品種のお茶を取り入れたそうです!
個人的に気になっていたのが、お店の周辺に、たくさん並んでいる植物。これらは山口さんの趣味で、中学生の頃から新しい植物の品種作りに挑戦していたのだとか。お茶づくりもその延長にあると話していました。
広大な茶畑でさまざまな品種のお茶づくりに果敢に挑戦されている理由がほんの少しわかった気がします。それもまた、知覧茶・浮辺製茶のお茶の個性の一つなのだと感じました。
これからの知覧茶のために、お茶づくりに留まらない想い
浮辺製茶さんのお茶づくりは決して平坦な道のりではなく、熊本地震で新幹線が止まったり、コロナ禍になったり……と、定期的に予期せぬ大変なことが起きてきたそうです。きっとこれからもそうで、だからこそ、直売やECなど、お茶を楽しむ人たちと様々な接点を持つことが、困難を乗り越える秘訣だと気づいたと、山口さんは教えてくれました。
そして、今後、力を入れる活動の一つとして、お茶を育てることと同時に、人を育てる必要があると語る山口さん。自分でつくったお茶を、一人で売るだけでも知覧茶の宣伝にはなりますが、知覧茶がより多くの人の元へ届くように、お茶を伝える仲間を育てていこうとしています。また、平地に比べて管理が難しい山の上の茶園が次々と荒廃している様子を目の当たりにし、どうにか活用するための仲間も集めているそうです。
実は、地域の商工会でも活躍する山口さん。知覧への想いはお茶に留まらず、知覧の特産品の良さを伝えることにも力を入れていきたいと、地域全体の未来を見据えておられました。
新茶の時期でお忙しい中、お茶への想いをたくさんお話くださった山口さん。お客さまが知覧茶を楽しんでくれることはもちろんですが「従業員が『うちのお茶は美味しい』と誇りに思いながらお茶を売っている姿を見ると、とても嬉しい気持ちになる」と話していたのが印象的でした。頑張ってくれている従業員のためにも、お茶づくりに熱が入るそうです。お客さまに限らず周りの人の反応が、お茶づくりのモチベーションに繋がっているのかな、と山口さんがお話される姿を見て感じました。
山口さん、浮辺製茶の皆さま、ありがとうございました!
◼️「お茶の春一番」公式HP:http://haru1ban.info/
◼️オンラインショップ:http://shop.haru1ban.info/