Japan Tea Action
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2023-12-27

畑も色も味わいも、本当の抹茶の姿を体感する「ほんず抹茶」を巡る旅(京都)

 こんにちは、「お茶と旅」最後の地、京都を担当いたします、山内菜緒です。東京と滋賀の2拠点でカイロプラクティック、ファスティングと身体の調子を整える先生をしています。

プロフィール:山内 菜緒(やまうち なお)
滋賀県と東京都の二拠点生活。3歳男の子ママで、親子モデルやインフルエンサーとしても活動している。
「ABCマート親子アンバサダー」や「東京ガス CM」「しまむらモデル」等。身体にも良い成分がたっぷりの「お茶」生産にもとても興味があり、今回のお茶と旅に参加。

 もう30年以上前の話になりますが、わたしの曽祖母はお家でもお着物で過ごし、おやつの時間にはお抹茶をたてる人でした。特に作法に厳しいということはなく、まだ幼かったわたしにもお茶の道具を貸してくれて、大おばあちゃんの真似をしてお抹茶をぐるぐるシャカシャカ混ぜたりしていた記憶があります。

 当時のわたしの記憶ではお抹茶はとても苦く、「大人の飲むもの」という認識でした。

究極の抹茶「ほんず抹茶」って何?

 今回は、京都から電車で小一時間、城陽市にある「孫右ヱ門(まごうえもん)」さんにお邪魔してきました。こちらでは、400年以上続く大変希少な究極の抹茶『ほんず抹茶』を楽しむツアーを扱っているとのことで、道中もワクワクしながら向かいます。私の知っている抹茶像との違いが楽しみです。

 孫右ヱ門さんは200年以上前から、この城陽市でお茶を作り続けている老舗の生産者さん。まずは、抹茶づくりやこの地域の歴史など、抹茶にまつわる様々なお話を代表の太田さんから伺いました。

 そもそも究極の抹茶「ほんず抹茶」とはなんぞや?というところですが、「ほんず製法」という安土桃山時代から受け継がれてきた伝統的な製法で作られた抹茶のことだそう。その製法を行う茶農家の数はかなり限られており、現在では十数軒、その中で独自の有機肥料と製法で生産できるのは世界でも数軒だけといわれます。

 抹茶の元になる碾茶(てんちゃ)は、茶畑に日光を当てないように化学繊維などの覆いを被せて栽培しますが、ほんず製法では「よしづ(ヨシの木の茎で編んだすだれ)」と「わら」で日光を遮ります。これが宇治の産地に昔から伝わる覆い方で、抹茶の中でも特に色が鮮やかで上品な香りと味がするため、“究極の抹茶”とされているのです。

 ただ、「よしづ」や「わら」の入手が困難であること、手間暇がかかり非効率であること、特殊な技術が必要であることなどの理由から「ほんず抹茶」の生産はごく僅かとなっています。

 お話を聞けば聞くほど希少性が上がっていく「ほんず抹茶」。時期的に、ほんず製法の茶畑は見られなかったのですが、近くに被覆する茶畑があるとのことで、太田さんのご案内で早速向かいます。

 到着して目に入ったのは、私たち一般人が想像するお茶畑&お茶摘みとは全く異なるもので驚きました。 お茶畑といえば、写真左のようなかまぼこ型の畝(うね)が連なる畑で、傘を被ったお茶摘みのお姉さんたちが籠に摘んだお茶の葉を入れていくアレですよね。

 ところが、隣の茶畑には、身長157cmの私が埋もれてしまうくらい高く伸びたお茶の木がびっしり並んでいるではありませんか。これが、自然仕立てで育てた、本来のお茶畑の形とのこと。

 新茶の季節はもっと高く伸びているそうです。ここでは、茶摘みは屈んでするものではなく、むしろ背伸びして摘むという想像と違う景色になります。

 そして、遮光度99%の布をかけて茶畑を覆い、その中で美しい黄緑色のお茶が育ちます。蓋をされた状態の茶畑の中には濃密なお茶の香りが充満するそうで…そんな中で深呼吸してみたいものです。

 こちらの畑の他にもこの地域には孫右ヱ門さんの茶畑がいくつも点在しています。茶畑が1箇所に集中していないのは、ご先祖様がお茶に適した土地を見極め、その土地でお茶づくりを続けてきたからだそうです。ここまでこだわってお茶づくりに向き合うことから、美味しいお茶をつくりたいという想いの強さが感じられます。

色も味も、抹茶の概念が変わる

 茶畑を見学させていただき、おうちに戻った後は、念願のお抹茶をいただきます。

 さて早速「ほんず抹茶」をいただくのかと思いきや、その前に太田さんが出してくださったのは、『葉脈』の部分で淹れたお茶。「ここは普段は飲む部分じゃないんだけどね〜」と淹れていただいた一杯に衝撃を受けました。


 「今、わたしが飲んでいるコレは…お茶か!?」

 え、なに言っているの?と思われるかもしれません。しかし私の感想はこうだったんです。お茶を飲んでいるというよりも、きのこか何かのスープでも飲んでいるような、そんな口の中いっぱいに広がる旨味。今まで飲んできたお茶と全く違います。

 旨味の元はアミノ酸とグルタミン酸。ほんず製法で作れらた茶葉は、アミノ酸、そしてグルタミン酸がぎゅっと詰まって旨味が普通のお茶とは比べものにならないレベルまで引き上げられているのでした。

 本来お茶として飲まない部分だと言って出されたお茶にこんなに感動してしまって、本命の「ほんず抹茶」を飲んだらどうなってしまうのだろう…そんなことを考えつつ、ついに「ほんず抹茶」とご対面の時。

 茶筌(ちゃせん)と器、お茶菓子が運ばれてきました。器もいくつかご用意いただいたものの中から選ばせてもらって、これも楽しみの1つですよね。

 そしてここからも楽しいお抹茶をたてる体験タイム! 素人でも簡単に、その道ウン十年の師範レベル!?なお抹茶がたてられる裏技を教えていただきました。コレは…ぜひ現地にて教えてもらってください(笑) 茶筌でシャカシャカしても全然綺麗に泡立たなかったのが、こんなに簡単にできるなんて〜と取材陣みんなで感動していました。正式な場や、人様に魅せるやり方ではないですが、おうちで自分が楽しむには十分過ぎました。高かったお抹茶の敷居が少し近づいた感じがして嬉しかった部分でもありました。


 肝心のお抹茶ですが、まずはその色味に驚きです。お高いお抹茶は、なんとなく深く暗い緑のイメージがありましたが、綺麗で鮮やかな黄緑色!

 早速一口いただきます。先程飲んだ葉脈部分のお茶よりも何十倍も旨味が深く、ほんのり苦味と甘味も相まって…本当に今まで飲んだことのあるお抹茶はお抹茶だったのか?と疑いたくなるほどでした。良いお抹茶は苦いものだ、と思っていた固定概念が崩れさります。

 私は、食べること、飲み歩くことが大好きでいろんなところでいろんなものを食べ、飲み、飲食にお金をかけまくって40年近く生きています。この歳になると、新しいものを食べたり飲んだりしても「あーコレはあのお店のアレに似ているな〜」とか「この感じのやつね、好き好き〜」とか、良し悪し意外に過去の記憶に何かしら似通ったものを見つけてしまいます。それを無意識に探してしまっているのかもしれません。美味しい!好き!と思うことはよくあります。でも、食べ物や飲み物で、言葉が出ないほど大感動!!!って、もう何年も経験がなかったと思うのです。

 そんな私に大感動を与えてくれた「ほんず抹茶」。心からファンになりました。贈り物なんかにもぜひオススメしたいです。ただ、ホントに飲んだことの無い味なので、「お抹茶だよ〜」と渡すのではなく、お茶ができるまでのストーリーや希少価値もお伝えしてからお渡ししても良いかもですね(笑)

 そうそう、今回お話を聞いた中で驚いたことがありました。このツアーの発端について。抹茶は海外で人気が高い上に、インバウンドが多い京都の地で、インバウンド向けにこのツアーを作っているのかと思ったら意外や意外、太田さんの口から出てきたのは「海外の方はもちろんですが、もっと日本の方々や、茶道家の皆さんにもお茶の作られる過程を知ってほしい。」とのこと。茶道家の皆さん?そういう方々はお茶のことは詳しく知っているのでは?と思ったのですが…

 お茶は、生産者さん→茶問屋さん→小売店さんを経て、茶道家さんなどの私たち消費者に行き着くという流れが多く、生産者さんから茶道家さんまでは手に渡るまでにかなり距離があるのが現状です。確かにそこまでたくさんの人の手を渡っていくとなると、なかなか生産者さんの深い想いまで商品に乗せて茶道家さんの元へ、というのは難しい部分でもあるかもしれません。さらにお茶に馴染みの薄い一般の私たちなんてもっと遠い存在になってしまうところです。そういった生産者さんがこうしたツアーを組んで、歴史や想いを伝えてくれる場というのは大変貴重ですし、良い経験になると感じました。

 私には3歳の息子がいます。抹茶のお菓子やかき氷、今回知った抹茶のことを考えると別物になってしまうかもしれませんが(笑) 私がそんな抹茶味のお菓子などを好んで食べることから、息子も影響を受けているのか好んで一緒に食べたりしています。まだ3歳には「ほんず抹茶」の魅力はちょっと難しいと思うので、もう少し大きくなって旨味がわかるようになったら、また息子と一緒に訪れたいなと思います。その時はお茶摘みができる季節に…

<体験概要>
■株式会社 孫右ヱ門「Magouemon Tour」
https://www.magouemon.com/tour/
■住所:〒610-0118 京都府城陽市水主南垣内18

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