世界中のお茶好きが集まる、新しい旅のかたち「ティーツーリズム」へ
以前、お茶がテーマのホテル「ホテル1899東京」の紹介記事でもご紹介したように、お茶の体験は様々な広がりを見せています。より五感でお茶を体験できる取組について取材し、その魅力をご紹介する特集、第2弾。今回は、お茶を楽しく知る旅「ティーツーリズム」を取材してきました。
京都最大の茶産地、和束町(わづかちょう)。広大な茶畑が広がり宇治茶の約40%を生産するこの町は、お茶の桃源郷「茶源郷」とも呼ばれます。そんな和束町にある「京都おぶぶ茶苑」のティーツーリズムは、インバウンド観光客に大人気! コロナ前には、なんと年間1,500人を超える参加者がいたそうです。今回は、京都おぶぶ茶苑 副代表の松本靖治さんに、ティーツーリズムの魅力について語っていただきました。
京都・和束(わづか)で、和束茶に出会い感動したことからお茶の道へ。ネットショップや茶畑オーナー制度、インターンやティーツーリズムの企画から運営まで担う。日本茶インストラクター第7期。
壮大な茶畑、9種のお茶テイスティング。いろいろな角度からお茶を楽しく知る旅
―― ではさっそく、おぶぶ茶苑さんのティーツーリズムについて教えてください。
松本さん:さまざまなプログラムがありますが、メインは日本茶ガイドツアーです。4時間かけて、茶畑や工場などの見学を通して、日本茶を楽しく学んでいただくプログラムになっております。
まずは、簡単なガイダンスとして、京都のこと、和束町のこと、日本茶のことなどをお話します。
―― 日本茶の基本を知ることで、これから体験することに期待が高まりますね。
松本さん:そうですね。期待感を高めつつ、次は茶畑に移動します。ここでも、実際の茶葉を見ながらお茶のお話をさせてもらいます。今の季節の話とか、あとは、壮大に広がる茶畑の中で写真を撮っていただいたり。綺麗な茶畑の中でゆっくり写真を撮る体験って実は少ないみたいで、お客さんには喜んでもらえるポイントです。
―― 一面茶畑のこの空間は、見ているだけで圧巻の景色ですね。
松本さん:お茶が大好きな外国人のなかには、茶畑が緑の波のように続く和束に来て、五感でお茶を感じることができ「夢がかなった」と感激した方もいましたからね。
茶畑の後は、製茶工場を見学し、お昼ご飯の茶そばをご堪能いただいたりします。そして、畑から工場までしっかり見ていただいた上で、最後に9種類の日本茶を飲んでもらいます。煎茶、ほうじ茶、玄米茶、玉露、抹茶……などなど。マニアックすぎるものではなく、皆さんが楽しめるテイスティング体験です。この体験では、お湯の温度を変えて日本茶を味わう、ということもやっています。日本茶って、お湯の温度で味や香りが変わるんです。たとえば0度から100度まで変えて、その違いも感じていただいています。
―― 知っているようで知らない、日本茶の奥が深い部分を楽しく体験できました。
松本さん:それこそが、ここでしか出来ない体験というんですかね。しっかり体験していただきながら、時間いっぱい使って楽しくお茶を学ぶというプログラムです。おぶぶ茶苑のティーツアーは、海外のお客様がほとんどですが、ツアー中はお茶の質問がとまらないんです。好きなものを知りたいっていう気持ちに正直といいますか、とても面白いなと思います。
4時間のコースは少し本格的ですが、季節によっては、コンパクトな2時間コースもあります。こちらは、何となくお茶が気になる方でも気軽に体験いただけます。
ティーツーリズムで世界中に広がる、日本茶の魅力
―― おぶぶさんがティーツーリズムを始めた理由は何ですか?
松本さん:もともと私達は、お茶を作ってECサイトで販売していました。2010年頃、日本語に加え、英語のECサイトを始めたところ、日本茶に興味のあるハワイの方が「サイトの英語が分からないから作り直したい」って(笑)。その代わり、日本茶を勉強させてくれって来てくれはったんです。私達の英語サイトが良くなったら、日本茶に興味があってインターンしたい! という海外の方が続きました。そこからインターンシップ制度を始めて、現在まで26カ国128人ほど受け入れました。そんなことをしていたら「日本茶はすごく面白いから、これはツーリズムになるよ」って言われまして。インターン生と一緒に、ティーツーリズムのプログラムをつくったんです。今でもインターン生と一緒に、ツーリズムの内容をどんどんブラッシュアップしています。
―― 世界各国に日本茶の魅力と、おぶぶ茶苑さんの取組が伝わることで、きっとここまで広がったのですね。
松本さん:ここまできたのは全てご縁があってですね。9年くらい前にティーツーリズムを始めたのですが、当時はお茶業界では誰もやっていませんでした。カナダの大学でティーツーリズムを研究されていた教授が、世界中を調べたときに、例がほとんど無かったらしいです。おぶぶ茶苑の本格的なティーツーリズムは世界的にも珍しかったこともあり、人気が出たのかもしれません。
―― おぶぶ茶苑は、ティーツーリズムの先駆けとなる存在ですね。
松本さん:日本人は和束町を僻地だと思うかもしれません。しかし、国土が大きな国から来る外国人にとっては「空港や大都市からこんなに近い場所にこんなに綺麗な景色が」と驚きになります。空港を中心に円を描くと、可能性のある地域はいっぱいあると思うんです。
今は、長崎県の茶産地に移住し、そこでティーツーリズムの造成に力を入れています。アルコールからノンアルコールへと、世界的な健康志向になってきている現在、日本の茶産地にとってはチャンスです。今後は、全国7カ所くらいにティーツーリズムを広げたいなと思っています。
お茶への想い
最後に、取材にご同席いただいたインターン生のショウタさんも交えて、お茶の魅力についてお話を伺いました。
ショウタさん:僕も最初、急須に入れてお茶ついだりなんて、したことなかったんです。海外に出る時に、日本人やからなにか持っていきたいと考えて、お茶に行きつきました。
インターンで気付いたのが、お茶はコミュニケーションツールやな、と思います。お茶のセットを持って、まずは「お茶どうですか」って。淹れたお茶を飲みながら、旅行者など色々な方とお話させてもらいました。旅の面白さのひとつに、現地の人と話すこともあると思うので、コミュニケーションツールとして魅力的ですね。
松本さん:おぶぶ茶苑は、「日本茶を世界へ」「農業を楽しく」「茶畑からの社会貢献」の3つをミッションとしている会社です。ティーツーリズムは事業の1つで、他にも1日50円で茶畑オーナーになれる制度など、お茶に関するいろいろなことをやっております。
コロナ禍で、ツーリズムが止まったりもしましたが、これからも仲間とともに、日本茶を世界中に広げて行きたいです。
お茶はとても身近な存在で、日本人にとってあまり特別なものではないかもしれません。ですが、世界中の人が夢中になるおぶぶ茶苑のティーツーリズムに、ぜひ日本の方も参加して頂きたいと感じました。「茶源郷」での特別な体験を通して、知っているようで知らない日本茶の魅力を再発見できるかもしれません。
■名称:京都おぶぶ茶苑
■場所:京都府相楽郡和束町園大塚2
■公式HP:https://www.obubu.com/
■茶畑ツアー詳細:http://obubuevent.com/teatour/