お店で楽しむ日本茶。お茶の「淹れ方」とこだわりの「茶葉」で、味わい広がる
皆さんは普段、どんな時にカフェにいきますか? のんびり一息つきたい時、友人と楽しくおしゃべりしたい時、もしくは、美味しいコーヒーが飲みたい時……。その理由はさまざまですが、カフェは、多くの人にとって憩いの場となっています。
本来、日本語の「喫茶」とは、文字通り「お茶」を飲用する作法や習慣を意味します。カフェや喫茶店と聞くと、コーヒー、紅茶を思い浮かべる方も多いかと思いますが、昨今、日本茶の文化や伝統をお洒落に楽しめる、日本茶をテーマとしたカフェに注目が集まっています。
家で淹れるのとは違った「専門店で楽しむ日本茶の魅力」とは何でしょうか。
今回は、表参道にある日本茶専門店「表参道 茶茶の間」にお伺いしてきました。お店はなんと今年で17年目! 日本茶専門店のパイオニアともいえる名店です。茶々の間を経営される和多田さん、運営の北川さんに、お店で味わうお茶の魅力を語っていただきました。
2005年日本茶カフェ「表参道 茶茶の間」をオープン。茶茶の間にて日本茶ソムリエとして店頭、セミナーでの呈茶(ていちゃ)、お茶の仕入れや店の運営にあたる。お茶の魅力を伝えるために店外でのセミナー、メディア出演等でも活動。現在は店の経営を担当。
学生時代に日本茶に興味を持ち来店した縁から14年ほど前から茶茶の間にかかわり、現在は日本茶ソムリエとして店舗の運営を担当。店頭、セミナーでの呈茶、セミナー・イベント等の企画、茶器の仕入れ、店舗で使用されるテキスト全般を担当。スタッフ育成のためのセミナーなどにも取り組んでいる。
こだわり抜いたお茶の「淹れ方」で、味わいが広がる。
―― 早速ですが「茶茶の間」はどのようなお店か教えて下さい!
北川さん:お店で一番大事にしている事は「淹れ方」をご提供することです。茶葉とお湯をお渡してお客様ご自身で淹れていただくのではなく、こちらで社内資格を持ったスタッフが淹れたお茶を提供しています。
和多田さん:お店をオープンした当時は、煎茶を飲める所が少なかったんです。その時はコーヒーブームが先行していました。バリスタが丁寧にコーヒーをいれてくれる中で、日本茶はどうなんだろうと思い、お店では専任のスタッフが急須で淹れたお茶を楽しんでいただくことにこだわっています。
―― どんなお茶の淹れ方なんでしょうか? 気になります。
北川さん:お店では、茶葉によって淹れ方を変えています。急須の種類、器の素材、季節、お湯の量……全部のバランスを考えながら淹れます。例えば、水に空気を含ませることでちょっとまろやかになるんです。あとは、お湯の温度でお茶の香りの立ち方が変わってきたり。突き詰めていくと終わりがなくて、お茶を淹れるたびに日々勉強です。
沢山のお茶の道具からも、淹れることへのこだわりが伺えます。
北川さん:お茶を淹れるためのさまざまな道具があります。湯冷ましのためだけに使う道具とか。よく、急須からお茶が出る瞬間が注目されますが、そこまでに沢山の工程を経て、お店ではお茶をお出ししています。
熱湯や氷水を使ってじっくりお茶の旨みを浸出します。
―― 急須からお茶が出る工程はフィナーレなんですね。淹れ方は奥が深そうです。
北川さん:そうなんです。淹れ方で変化するお茶のいろいろな表情を楽しんでいただきたいです。
「単一農園・単一茶種」ならでは。煎を重ねて感じる、味わいや香りの変化。
―― お店の茶葉にはどんなこだわりがありますか?
北川さん:お店で扱っている茶葉は「単一農園・単一茶種」、つまり、「シングルオリジン」がほとんどです。一般的に、日本茶はブレンドしたものが流通しています。お茶農家さんが茶葉を作り、それを仕上げ業者が買い取って様々な茶葉をブレンドして仕上げ加工をするのがお茶の流通ルートだからです。
―― 「単一農園・単一茶種」の魅力はなんでしょうか。
北川さん:1煎目、2煎目と煎をかさねて淹れる時に、個性が出てとても面白い点です。それが特に分かるお店の淹れ方が、「かさね」です。「かさね」は、同じ茶葉から4回お茶を淹れます。最初の1煎目は、冷たい少量のお水でじっくり浸出し、2煎目、3煎目、4煎目と少しずつ茶葉を開かせて、味わいや香りの変化を楽しんでいただく淹れ方です。コース料理みたいに、お茶の香味を茶葉の表面から順番に取り出していくイメージですかね。
同じ茶葉なのに、味わいが全く違う!人気メニュー「かさね」(左から1煎目)
北川さん:同じお茶を煎をかさねる淹れ方で統一感のある味わいを楽しむことが出来る面白さは「単一農園・単一茶種」ならではの楽しみ方です。
お茶の「香り」、お茶の「道具」。お店のこだわりは色々。
―― 「茶葉」と「淹れ方」にこだわることで、ここまでお茶の味わいや香りが全然違うのですね。
北川さん:そうですね。あとはお店で選ぶお茶の基準としては、香りがいいお茶ですかね。お店のお茶の種類が多いので、分かりやすいようにお茶の分類表を作っていますが、項目の1つが「香り」です。お茶のイメージは味だと思われる方も多いですが「香り」も大事です。分類項目には「余韻」というのもあって、飲んだ後に口の中で残る香りを指しています。このあたりは、僕がお酒好きなのもあって、ウイスキーなどの感覚を持ち込んでジャンル分けしました。
お店の入り口には、さまざまな項目のお茶の分類表が。
―― お茶の特徴が言語化してあると分かりやすいですね! これだけ種類があると、選ぶのに悩みそうです。
北川さん:お店では、お客さんとお話しながら、こちらでお茶をセレクトしてお出ししています。甘いお茶、渋いお茶、香りがいいお茶、などのキーワードをお聞きして、そこから話を広げて、この人だったらこのお茶だなって。
―― 他にも、お店で楽しめるお茶体験はありますか?
北川さん:お店の2階では、お茶関連の展示会を行っています。今だと、急須の展示販売ですね。うちのスタッフ憧れの、常滑の職人さんの急須です! お茶の楽しみのひとつとして、手作りの道具があると思います。職人さんによって一つ一つ手造りされた急須が道具の選択肢の中にある。そして、使っていくことで急須が育って、テリが出て自分だけのものになっていく。お茶の世界の「道具が育つ」って、すごくいいなと思っています。是非みなさんにその楽しみを体験してほしいですね。
今だからこそ、急須で淹れたお茶を、お店で楽しむ。
―― 今はまだお茶に馴染みがない方への、メッセージをお願いします。
北川さん:今は、ペットボトルのお茶が当たり前で、急須でお茶を飲んだことがないという方もいらっしゃるかと思います。お茶のひとつの美味しさに、淹れたて、というものがあります。ぜひ急須で淹れた、できたてのお茶を飲みに来てみてください。
―― お店で味わう急須で淹れたお茶は、ペットボトルの対極みたいなところですよね。
北川さん:そうですね。色々なお茶があって、それぞれに楽しみ方や美味しさがあると思います。
私たちのお店はお茶業界全体で見るととても小さい枠ですが、急須を使って一杯ずつお茶を淹れていく、そんな当たり前のことを続けていけたらいいかな、と思っております。