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2022-06-20

川根茶【後編】経験や感覚を活かした、お茶の木ファーストのお茶づくり| 新茶前線北上レポート

 こんにちは。新茶前線レポーターの山田璃々子です! 川根茶レポートの後編では、摘んだお茶の加工場での出来事や、つちや農園さんの、自然に合わせた、お茶の木に合わせたお茶づくりについてお届けします。

コンピューターだけじゃない、“勘ピューター”でのお茶づくり

 つちや農園さんはご自宅の隣に、お茶を蒸して揉んで加工する「製茶工場」があり、その周りを囲むように茶畑が広がっています。まさにお茶と共に暮らしているようです。実は、他のお茶園さんと比較して小規模の加工場だそうですが「この規模感だから、お客様の声を直接反映したお茶づくりができる」とのこと。お茶の葉を少量ずつ、丁寧に加工していきます。

 加工場には、摘み子さんと一緒に摘んだ茶葉が次々と届き、フレッシュな香りが漂ってきました! ここからさっそく茶葉を蒸していきます。ボイラーの火加減を調整して、柔らかい湯気を葉に当てるのがポイントだそうです。「蒸し」工程を終えて柔らかくなった茶葉は、何工程も分けて揉まれていきます。加工工程は、これまで訪れたお茶園さんを含め、ほとんど共通ですが、その茶葉に合った蒸し具合、揉み具合などはそれぞれ違います。そこが難しい点であり、お茶の個性にも繋がる面白い点でもありますね。

 お話を聞いている間にも、お茶の加工は進んでいきます。時折、機械から茶葉を取り出し、手で触って確かめ、機械を調整している姿が見られました。なんと茶葉の微妙な湿り具合を、長年培った手の感覚で感じとっているそうです。

 園主の土屋鉄郎さんは「コンピューターだけじゃなくて“勘ピューター”でお茶をつくっているんだよ」と、語ってくださいました。機械のみに任せず、経験や感覚を活かしたお茶づくりに感動です。茶葉を握りしめている様子はまるで、茶葉と会話しているようにみえて、暖かい気持ちになりました。

 機械ができる前は「手揉み」だったお茶の加工。江戸時代ごろから、各お茶産地の茶葉に合った「手揉み」技術が研究されました。現代は「手揉み」の動きを再現した機械での加工がほとんどですが、実は機械の開発に際し、モデルの一つとなったのが川根の手揉み技術だそうです。川根の技術は今の機械にも息づいています。

人が感じていることを、お茶も感じている

 加工場が動き始めると、室内がだんだん暑くなっていきます。夕方、休憩のため少し外へ出た時に、涼しさにビックリ! 到着した時の気温と全然違います。「この涼しさがお茶にとって大事なんです。」と、裕子さんの旦那さん・土屋和明さんが教えてくれました。

 標高600mにあるつちや農園さんは、平野部よりも昼夜の温度差が大きい場所。この温度差のおかげで、旨みや香りの元となる養分がお茶の葉にぎゅっと蓄えられ、良質なお茶が育ちます。これは、日中に光合成で作られた養分が、夜は気温が低いため葉の呼吸量が減り、無駄に消費されず蓄えられるためです。

 また、訪れた日は“涼しい”と感じる気温でしたが、川根の山間部の冬は厳しい冷え込みになります。平野部より約5℃ほど気温の低いこの場所では、秋になると、お茶が風邪をひかないように畝(うね)の間にすすきを撒いて“自然のコート”を着せてあげるそうです。日々の天気、気温などの変化で、人が感じていることを、お茶もそのまま感じているのですね。

「この土地だからつくれるお茶を、伝えていきたい」お茶の木ファーストなお茶づくり

 「この地だからつくれるお茶を、伝えていきたい」という想いで、日々お茶と向き合う3代目・土屋裕子さん。一般的に4月頭から新茶の時期が始まりますが、山のお茶は新茶の時期が遅いため、新茶商戦に乗り遅れてしまいます。「でもそれは決して弱みではなく、むしろ個性であり強みです。世の中の流れに合わせて、無理にお茶の生育を早めたりするのではなく、この土地にあったお茶づくり、お茶の木にあったお茶づくりを実践しています。」と、お話くださったのが印象的でした。お茶の木のことを一番に考えた、まさに“お茶の木ファースト”のお茶づくりです。

 そんなお話を聞きながら頂いたつちや農園さんの新茶は、香り高く、驚くほどの旨味とコクでした。山の自然環境を存分に活かし、確かな技術と経験によってつくられる川根茶。ひたすらお茶と向き合い丁寧に接することで、こんなにも旨味たっぷりのお茶が出来上がることが、現地を訪れて分かりました。

 土屋裕子さん、つちや農園の皆さま、ありがとうございました!

◼️「つちや農園」公式HP:http://www.tsuchiya-nouen.com/
◼️お茶販売ページ:http://www.tsuchiya-nouen.com/html_files/buy.html

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